これは又いつの日の話だろうか?
覚えているほどの事でもないといえば無いのだが……
秋風と解る枯葉の舞い上がる日であったのは覚えているといえば覚えているのさ……
「冬は嫌いだ…… 寒いから、な…… 」
そして人も嫌いだ。 どれが本当で嘘なのか見抜くにも時間も掛かるのでな。
ここは帝國、陰陽寮と呼ばれる権威において、私は正六位上(ショロクイジョウ)の神位を与えられている。
この位とは神に与えられるもので、無神論者の私が受ける物でもないのだが。
犯罪者、妖と呼ばれる者、認知するものに対しての生殺与奪の権利が特権として認められているのさ……
『何カ考エ事デスカ? 』
「うん? あぁ…… 別に 」
そう気遣う女は名をアナスタシアと言う。
簡単に言えば銀髪の露西亜人で死人だ。
そして最愛の私の恋人でもある。
元々存在しない存在として生まれ、私の隣にいてくれる異国の女……
つまりはそう…… 戸籍と言う物が無いのさ。
赤いレンガの壁は、私達二人の影絵を写して伸びて縮み景色を変える。
草木も眠る、そんな時刻に私の左手には女の首が在ったのさ。
時を遡ると今回は、犯罪者を追って殺そうか考えている所さ。
それはどのような話であったのか思い出そうとしても取るに足らぬ事だったのでね…… 思い返すのは難しいものさ。
男と女がいて、それは真実の愛を共有していたはずだった。
東北地方に住み南下して帝都へ向かい、博打と強奪でその日その日を生きる二人であったそうだ。
聞くも涙、語るも涙と言うのであろうか?
私はそう思う事無く女の首を跳ねたわけだがね……
時系列を直そうか……
何時もの様に私は部屋でくつろいでいただけさ……
『陰陽寮ヨリ報セガ来テオリマス』
アーニャがソレを読み上げると今回の話は単純であった。
【東北地方より、南下し帝都へ向かう罪人。 異能の罪人と見受けるため探し出し詳細を告げられたし】
犯罪者が妙な力を持っているので確認し始末しろとでも言いたいのさ。
私は殺し屋でも無いのだが、事情もあるのでね……
尽きましては、否と思う全てを嫌ですとも言えぬ身分であるのさ。
「アーニャ…… 陰陽寮とは実に面倒事多い所だな? 」
『ダー』
素直に良い娘であろう? 私の宝物さ。
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